■リンパ系とは
毛細リンパ管に取り込まれたリンパ液が、リンパ管を通じて全身をめぐり、最後に静脈に合流する一連の流れをリンパ系といいます。 リンパ系の役割は、主に4つあります。
・戻れなくなった水分を血管へ送りかえす
血管から出て血管に戻れなかった水分(組織液)をリンパ管に集め、静脈まで運びます。これにより、血液はその量を大きく増減させることなく、循環することができます。
・免疫反応の中核を担う
免疫細胞の1つであるリンパ球は胸腺といわれている器官で、自己と非自己を学び、的確な指令を出して、外敵から体を守ります。
・吸収した脂肪分を運ぶ
小腸で吸収された脂肪分(乳糜(にゅうび))は腸のリンパ管に取り込まれ、胸管を通って静脈まで運ばれます。このため、小腸の内壁にあるリンパ管は乳糜管(にゅうびかん)といわれることもあります。
・タンパク質、有害な生物(ウィルスなど)、老廃物をろ過する
リンパ節内の免疫細胞が、タンパク質、細菌やウイルス、細胞の代謝から生じた老廃物などを攻撃、倒し、最終的にリンパ液はきれいな状態で静脈へと戻っていきます。リンパ系は体にとって下水道、浄水場のような存在です。
■リンパ系の構造
リンパ系は、リンパ液、リンパ管、リンパ節などのリンパ組織からなります。
【リンパ液】
リンパ管の中を流れる液体をリンパ液といわれています。リンパ液の主成分は、血液中の液体成分である血しょうです。
血液は心臓から出て、また心臓に帰りますが、一部の血液は体のすみずみで毛細血管から外に出て、体内の細胞に酸素と栄養素を届けています。届け終えた血液は再び血管に戻りますが、その際に戻れなかった水分を組織液といい、全身の細胞はこの組織液の中に浸った状態で存在しています。この組織液の一部が毛細リンパ管に入り、リンパ液となります。組織液には細胞から出た老廃物や細菌、ウイルスなどの異物が含まれており、それらも一緒にリンパ管に取り込まていきます。
血液が外に出る時に、血液の赤い色の元である赤血球は大きすぎて、血管の壁を通り抜けられないため、外に出た水分は赤ではなく薄い黄色をしています。また、血液を固まらせる成分である血小板も血管の壁を通り抜けられないため、リンパ液の凝固能力は血液より低くなります。
血しょうは壁を通り抜けて組織液の基礎になり、リンパ管に入ってリンパ液となります。リンパ液は全身のどこの血管から外に出た組織液を取り込んだかにより、成分が異なります。例えば、小腸から取り込んだリンパ液は脂肪球を含むため、乳白色で、他のリンパ液とは区別して、乳糜(にゅうび)と呼ばれています。
【リンパ管】
動脈と静脈に沿って走行しており、体の中心に向かいます。リンパ管にはリンパ液の逆流を防止する弁があります。
血液が流れる管は血管ですが、リンパ液が流れる管はリンパ管といわれています。血管は心臓を中心に輪をかくように体の中を循環しています。心臓から出た血管は動脈であり段々と分かれながら細くなり、毛細血管となって体の各所をまわり、その後、静脈となって段々と集まり太くなって心臓まで戻ります。
対して、リンパ管は輪になっておらず、一方通行の道のような構造です。全身の末梢(体の隅々)で毛細リンパ管として始まりますが、その起点は閉じられており、どの組織ともつながっていません。薄い壁を持つ1層の細胞からできており、静脈と似た構造ですが、静脈よりも壁が薄く、透過性が高いため、大きな分子のタンパク質や病原体など通常血管には入らないものも通します。
始まりは細くて網目状の毛細リンパ管ですが、それらが段々と集まって合流し、集合リンパ管、そして主幹リンパ管となり、太くなっていきます。最後は胸管、右リンパ本幹といわれる2本にまとまって、静脈に注ぎます。
リンパ液は静脈とつながる出口に向かって、一方向に流れています。リンパ管には大きなポンプがありません。そのため、人の動きとともに起こる筋肉の収縮、弛緩により生じる圧力、呼吸により生じる胸の中の圧力の変化、体の外からのマッサージ刺激などがリンパ液を流す助けとなります。その圧力は弱く、血液と比べるとリンパ液の流れるスピードはゆっくりです。流れる速さも一定ではありません。